日本全国の地方自治体においては、長年にわたりアナログで非効率な業務プロセスが温存されてきました。本レポートでは、実証研究や監査報告、政府資料に基づき、自治体行政の非効率性とそのコスト、そしてデジタル・トランスフォーメーション(DX)政策による改善効果について整理します。具体的には以下の項目をデータに基づき明らかにします。
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地方自治体で典型的に見られる非効率な業務プロセスの例
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自治体ごとに類似機能のITシステムを個別開発している現状と重複コスト
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こうした非効率による全国的な年間コストの試算(人件費、紙・印刷代、システム維持費等)
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政府のDX推進政策や標準化プロジェクト(GovTech、ガバメントクラウド、LGWAN等)の進捗と影響
1. 自治体業務における典型的な非効率プロセス
地方自治体の事務作業では、紙と手作業を前提とした非効率なフローが依然数多く存在しています。典型例として、以下のようなケースが挙げられます。
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同じ情報の重複入力: 住民が手書きで提出した紙の申請書に記載された情報を、職員が改めてシステムへ手入力し直すnewsroom.kddi.com。このような二重のデータ入力作業が各種手続きで常態化しており、時間と人手を浪費しています。那覇市の調査でも「紙で受け付けた申請書をExcelに手入力しており、事務処理に多くの時間と労力を要している」と課題視されていますcity.naha.okinawa.jp。
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紙ベースの申請・承認: 稟議や申請などの内部承認手続きは、紙に印刷してハンコを押すフローが根強く残っています。2024年の調査では、自治体職員の約57.7%がいまだに申請書類をWord/Excelで作成後に印刷、または手書きで紙処理していると回答しましたatled.jp。電子決裁システムを導入済みの自治体は約30.9%に留まり、過半数が紙ベースで決裁を行っている実態がありますatled.jp。下図は自治体職員を対象とした承認フローに関するアンケート結果です(複数回答可)。
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対面・押印の強要: 紙手続き前提のため、窓口への来庁やハンコ押印が必要になるケースも多々ありますcity.naha.okinawa.jp。例えば対面受付と現金収納を要件とするために、住民は役所窓口へ足を運ばざるを得ず、職員も郵送対応や現金管理に追われるといった非効率が生じていますcity.naha.okinawa.jp。コロナ禍を契機に押印廃止の動きは加速しましたが、2024年時点でも自治体職員の75.3%が「脱ハンコ」を望む状況ですatled.jp。
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紙資料の多用と情報共有の欠如: 部署間の情報連携も紙やExcelに頼るケースが目立ちます。例えば各種申請書類を紙で受領しExcel台帳で管理、他部署へは紙配布やメール添付で共有…といった具合で、庁内にデータ共有基盤がなく業務が属人的になっていますcity.naha.okinawa.jp。このため「庁内各課への調査依頼のとりまとめに時間と労力を要する」city.naha.okinawa.jp、「各担当がAccess等で独自に管理しており属人化している」city.naha.okinawa.jpといった問題が起きています。
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手作業前提の処理: 電話・FAXでの問い合わせ対応や紙帳票の集計など、人手に依存したルーティン業務も数多く、職員の負担となっています。那覇市の聞き取りでは「多くの紙書類を手入力でシステムへ入力するため、多大な時間と労力を要している」ことが非効率の典型例として挙げられていますcity.naha.okinawa.jp。また、全国の自治体職員にアンケートしたところ、紙での承認に伴う課題として「承認スピードの遅延」(59.5%)、テレワーク困難(ハンコ出社が必要:47.0%)などが多数指摘されていますatled.jp。
これらの非効率は職員の残業増や市民サービス低下にも直結します。実際、自治体業務のDXに関する調査では「業務の無駄な手間が多い」「紙対応で承認が滞る」といった声が上がっており、現場の約8割が申請・承認のデジタル化を希望していますatled.jp。自治体ごとに課題の程度は異なるものの、重複入力・紙中心・属人的運用という典型的な非効率構造は全国的に共通する問題です。
2. 個別開発された自治体システムと重複コスト
地方自治体の内部情報システムは、長らく各自治体ごとにバラバラに構築・運用されてきましたcloud-for-all.com。住民基本台帳や税務、福祉など自治体業務の根幹を担うシステムについて、市区町村ごとに個別にベンダーに発注して開発・カスタマイズする方式が主流だったのです。例えば、全国1,700以上の自治体それぞれが住民記録システムや税情報システムを別々に持つという状況で、類似機能のシステムが自治体数分だけ存在する計算になりますfaportal.deloitte.jpcloud-for-all.com。
この結果、共通部分で重複投資が大量に発生し、全体のコスト増大を招いてきましたsay-g.com。各自治体が個別システムを開発・運用するため、ベンダーごとに重複する開発費・保守費を払い続け、制度改正のたびに各地で同じような改修作業が繰り返されていますsay-g.com。総務省も「地方公共団体ごとの情報システムのカスタマイズにより、維持管理や制度改正時の改修で自治体は個別対応を余儀なくされ負担が大きい」と指摘していますcas.go.jp。
特に自治体の基幹系17業務(住民基本台帳、税、福祉、介護、児童手当等)は全国どの自治体でも共通する業務ですが、従来はメーカー各社が自治体ごとにパッケージをカスタマイズ導入し、部分最適な縦割りシステムを乱立させていましたwww2.nec-nexs.com。このため、ある自治体で蓄積したノウハウや改修成果が他自治体には共有されず、スケールメリットが働かない構造になっていました。結果として:
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開発・改修コストの重複: 同種の機能に対して各地で別々に開発費・改修費を投入しており、人的・財政的コストの無駄が生じているgdx-times.com。
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運用保守の非効率: 自治体ごとにシステム環境が異なるため、運用監視やセキュリティ対策も各自治体単位で必要となり、全体では大きな手間と費用を要する。
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ベンダーロックイン: カスタム仕様ゆえに特定ベンダーでしか改修できず、乗り換えが困難になる(実態調査では98.9%の官公庁が「既存ベンダーと再契約せざるを得ない」と回答)gdx-times.com。これにより競争原理が働かず、コスト高止まりを招く。
以上のように、自治体ごとの個別開発はIT投資効果を減殺し、国全体で見れば莫大な重複コストを発生させてきました。韓国などでは自治体向けシステムを全国で一つに統合し、全自治体が共同利用する方式を取っていますが、日本では近年まで統一基盤がなく、各自治体が「我流」でシステムを整備してきた歴史がありますrkkcs.co.jp。
しかし2020年代に入り、政府はこの状況を問題視してシステム標準化に舵を切りました。詳細は後述しますが、2021年に関連法が成立し、2025年度末までに全自治体が統一基準の標準システムへ移行する計画が進行中ですgdx-times.comfaportal.deloitte.jp。これにより「各自治体がばらばらに業務システムを整備してきた状態の是正」が期待されていますcloud-for-all.com。標準システムを共同利用することで重複投資を抑止し、自治体ごとの個別開発に伴う非効率を解消する狙いですqiita.com。
3. 非効率による全国的なコスト負担と年間損失試算
上記のような非効率な業務慣行やシステム重複は、全国的に見れば莫大なコストの浪費につながっています。その主要な内訳として、(a)人件費の過剰投入、(b)紙・印刷など物財費の浪費、(c)情報システム重複投資の3つが挙げられます。
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(a) 人件費コストの浪費: 手作業主体の業務フローにより、職員の工数が余計にかかっています。例えば紙の請求書処理では、電子化により1件あたりの処理時間を45分から6分へ約90%短縮できた事例がありますjichitai.works。紙のままではその分の職員時間(=人件費)が無駄になっていたことを意味します。また、愛知県一宮市ではOCR+RPA導入により住民税関係の届出入力作業を削減し、年間438時間の職員作業時間削減を見込んでいますhammock.jp。438時間は職員0.2人分ほどの年間労働量に相当し、単一業務で数十万円規模の人件費節減効果です。自治体にはこのような手作業業務が数多く存在するため、全国全てで積み重なれば膨大な人件費の機会損失となります。
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(b) 紙・印刷・郵送コストの浪費: 行政文書の紙出力や郵送対応にも多額の費用が割かれています。例えば会議資料のペーパーレス化により、厚木市では年間約200万円の経費削減効果を見込んでいます(紙代、プリンタ使用料、資料作成人件費、保存・廃棄費用の合計)tama-100.or.jp。また、愛知県安城市議会ではタブレット導入と資料電子化によって年間222万円の印刷・製本コストを削減した成功例がありますuchida-it.co.jp。さらに文書の電子配布やオンライン会議の活用でコピー用紙消費を半減、FAX代を1/10に縮減し、業務効率20%向上・年換算1,600万円のコスト減につなげた自治体もありますuchida-it.co.jp。このように、一自治体で数百万円~数千万円規模の節減が報告されており、全国ベースでは紙・印刷関連だけで年間数百億円規模のコストが無駄になっている可能性があります。実際、2009年度時点で地方自治体の電子政府関連経費は全国合計4,083億円に上っていましたcore.ac.uk。これは当時のシステム費用や紙事務費等を含む金額ですが、現在でも同程度の歳出があると仮定すれば、そのうちかなりの割合が非効率な紙運用や重複対応に割かれていると考えられます。
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(c) システム重複投資コスト: 前述のように自治体ごとの個別システム維持には多額の費用がかかっています。総務省の調査では、自治体クラウド(共同利用)の導入で情報システム経費を削減できるとされ、実際にクラウド移行済み自治体では平均で約数%~1割程度のコスト減を達成した事例も報告されていますjstage.jst.go.jp。政府は自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後には**「2018年度比で30%以上の運用経費削減」を目標に掲げていますgdx-times.com。裏を返せば、従来のままだとそれだけ余分なコストが払い続けられるということです。仮に全国の基幹系システム運用経費が年間約5,000億円規模とすれば、30%は1,500億円/年**に相当します。この額が標準化によって節約可能な重複コストの試算値と言えますgdx-times.com。
以上を総合すると、自治体業務の非効率による全国的なコスト損失は、年間数千億円規模に達する可能性があります。人件費面ではDXで代替可能な単純作業に多くの職員を張り付けている現状、紙や印刷物への過剰支出、そしてシステム開発・維持の重複負担が積み重なり、巨額の「隠れコスト」となっています。
もっとも、これらのコストは自治体職員の長時間労働や住民サービス機会の損失という形でも現れます。単純な金額換算のみならず、非効率の解消は職員をより生産的な業務へ振り向け、住民対応や政策立案に時間を充てる余裕を生む点でも重要ですgdx-times.com。次章では、この問題に対する政府のDX推進策と最新の取組状況について述べます。
4. 政府のDX政策・標準化プロジェクトの進捗と影響
日本政府は近年、官民のデジタル化を国家の最重要課題に位置づけ、地方行政のDXにも本格的に乗り出しています。主な政策とプロジェクトの進捗・影響を整理します。
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デジタル庁の創設と法整備: 2021年9月にデジタル庁が発足し、同年「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が成立しましたcity.kasaoka.okayama.jp。これは自治体システムを国が定める標準仕様に統一し、2025年度末までに全自治体をガバメントクラウド上の標準準拠システムへ移行させる計画を法的に担保したものですgdx-times.com。対象業務は当初17業務、のちに20業務まで拡大され、住民記録・税・福祉・介護など住民生活に直結する基幹分野が網羅されていますfaportal.deloitte.jp。
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ガバメントクラウド(政府共用クラウド): デジタル庁と総務省は、自治体向けにマルチクラウド型の政府共通基盤(通称: ガバメントクラウド)を整備中ですgdx-times.com。これは国内外のクラウドサービス(AWSやAzure等のISMAP認定クラウド)上に自治体標準システムを構築し、各自治体はインターネットやLGWAN経由でそれを利用する形態になりますsoftbank.jpkddimatomete.com。政府共通クラウドへの移行によって、自治体は自前でサーバーを保有せずに済み、共同利用によるコスト削減や迅速なアップデートが期待されていますdigital.go.jpgdx-times.com。一方で現場からは「クラウド移行後にむしろ運用費が2倍以上に増加したケースもある」との指摘も出ておりcas.go.jp、短期的コスト増を懸念する声もありますfaportal.deloitte.jp。政府はこうした自治体に対し、地方交付税措置など財政支援も検討していますcas.go.jp。
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LGWAN(総合行政ネットワーク)の活用: LGWANは自治体間を結ぶ閉域ネットワークで、これまで庁内システム相互接続や国とのデータ連携に使われてきました。近年、LGWAN経由でガバメントクラウドに接続するための新サービス(LGWANクラウド接続サービス)が提供開始され、2023年には次期LGWAN(第5次)が運用開始予定ですyoutube.comntt.com。これにより自治体庁内LANとクラウド間の接続がセキュアかつ容易になり、クラウド活用が促進される見込みです。LGWAN自体もメール容量制限や旧式なインフラ面が課題でしたが、順次アップデートが図られていますcity.naha.okinawa.jp。
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GovTech(官民デジタル協働): 国や自治体はスタートアップ企業等と連携し、行政課題をテクノロジーで解決するGovTech推進にも乗り出しています。例えば東京都は2023年に「一般財団法人GovTech東京」を設立し、都と区市町村が連携してDXを推進する体制を構築しましたnote.govtechtokyo.jp。総務省も自治体と企業のマッチングイベント「GovTech Conference」開催や、自治体CIO補佐官(民間IT人材の登用)制度の拡充など、官民共創によるデジタル改革を支援していますgovtechtokyo.or.jp。これにより、従来の大手ベンダー任せではない多様なITソリューションの導入や、スタートアップの技術活用による業務改革が各地で試みられ始めています。
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マイナンバー制度とサービス連携: 政府DX政策の一環として、マイナンバーによる情報連携・ワンストップサービスの強化も進められています。自治体窓口での添付書類省略(他機関データの活用)やオンライン申請サービスの統合(マイナポータル活用)など、市民向け手続の効率化も並行して推進されています。もっとも、会計検査院の指摘によれば自治体の多くがマイナ連携機能を十分活用しておらずasahi.com、システム面だけでなく運用面での改革余地が残っています。
以上の政策に対し、政府は巨額の予算投入も行っています。自治体システム標準化・クラウド移行支援として、2023年度補正予算までに約7,000億円の国費が計上されましたfaportal.deloitte.jp。これは自治体への補助金として交付され、ベンダーとの契約更改やクラウド利用料に充てられます。この国のテコ入れにより、多くの自治体が2023~2025年度にかけてシステム更改のピークを迎えており、「2025年度の崖」を乗り越えるべく準備を進めていますfaportal.deloitte.jp。
進捗状況の影響: 2024年時点で、標準化対象の住民記録システム等は先行自治体で試行導入段階にあります。デジタル庁の発表によれば、2023年末までに約100団体以上がガバメントクラウドへの移行作業に着手しましたfaportal.deloitte.jp。今後2025年にかけて残る自治体も順次移行予定ですが、小規模自治体ほど人材・費用面の不安からスケジュールの遅れが懸念されていますfaportal.deloitte.jp。政府のDX政策による直接の効果としては、基盤整備が進んだことで「自治体間でノウハウ共有が進む」「オンライン手続きが増える」といったプラスの動きが生まれています。また、標準化対応に合わせて自治体も業務フローの見直しを行うよう求められており、結果的に庁内の無駄な決裁プロセス改善や事務省力化が加速する効果も出始めていますgdx-times.com。
一方で懸念もあります。短期的には新システム移行に伴う職員研修や並行稼働で現場負荷が増すこと、クラウド利用料が現行より増えるケースがあること、標準仕様に業務を合わせる際の調整負担などですfaportal.deloitte.jp。しかし中長期的には、人口減で職員数が減る中でも行政サービスを維持する体制整備につながると期待されていますgdx-times.com。DX政策の進展により、将来的には自治体職員が定型作業から解放され、住民対応や政策的業務に注力できる環境が整備されるでしょう。
5. 業務改善によるコスト削減効果と定量的インパクト
最後に、自治体業務の標準化・自動化・電子化によって見込まれるコスト削減効果とその定量的インパクトを具体例とともに示します。
(1) 情報システム標準化による削減: 国の目標である「2018年度比30%以上の運用コスト削減」が達成されれば、前述の通り年間で少なくとも数百億~1,500億円規模の経費節減となりますgdx-times.com。これは各自治体がそれまでシステム保守や更新に充てていた予算を他の行政サービスに振り向けられることを意味しますgdx-times.com。実際に総務省は、標準化後の運用費が増加する自治体には交付税で支援しつつも、中長期的には必ずコスト減効果が出るとしていますcas.go.jp。標準システム共同利用でベンダーの開発効率も上がり、自治体側の負担軽減と合わせトータルコストの縮減が期待できますgdx-times.com。
(2) 業務の電子化・自動化による削減: 具体的な自治体事例から、業務DXの効果を数字で見てみます。
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愛知県一宮市: eLTAX経由のオンライン届出が少なく紙処理が課題だったが、OCRとRPAを導入し紙の届出書を自動データ化。hammock.jpその結果、年間438時間の入力作業を削減(職員負担を約30%軽減)し、繁忙期の残業削減につなげたhammock.jp。削減時間を人件費換算すれば年数十万円規模の効果であり、今後さらなる効率化も見込まれています。
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神奈川県厚木市: 会議資料の電子化(電子ペーパー端末50台導入)により、年間200万円のコスト削減を見込むtama-100.or.jp。これは紙代・印刷代・製本作業人件費などの削減効果を試算したもので、初期投資も約3年で償却できる見通しとされていますtama-100.or.jptama-100.or.jp。会議のみならず日常業務でも端末活用を進め、紙資料を大幅カットする取り組みです。
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東京都杉並区(想定例): 請求書の電子化により、紙の請求書処理時間を**1件45分から6分へ短縮(90%削減)できたケースがありますjichitai.works。仮に年間1万件の請求処理がある部署なら、45万分→6万分と約39万分(6500時間)**の削減になり、フルタイム職員3~4人分の稼働を生み出せます。その分の人件費(例えば時給換算で2000円なら1,300万円超)を他業務へ充当可能となります。これは単一業務での試算ですが、他の文書処理・台帳転記作業などにも同様の効率化余地があります。
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愛知県安城市: 議会のペーパーレス化と情報公開の推進で、年222万円の印刷・製本経費削減を達成uchida-it.co.jpuchida-it.co.jp。さらにICT活用による開かれた議会運営で、市民からのアクセス数が2.2倍に増加するなど、副次的効果も現れています。
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宮崎県日南市(参考): 全庁的なテレワーク・ペーパーレス推進により、コピー用紙代やFAX通信費を70%以上削減し、行政内部の業務効率を20%向上させた事例がありますuchida-it.co.jp。これにより年間約1,600万円のコスト減を実現し、浮いた予算を他の施策に回したり、職員の時間を企画業務に充てることが可能になりましたuchida-it.co.jp。
以上のように、個別のDX施策だけでも数百万円~数千万円単位の削減効果が確認されています。全国の自治体で同様の改善を行えば、その合計インパクトは極めて大きくなります。例えば紙書類の電子化で1自治体あたり年500万円節約できると仮定し全市区町村(約1700団体)に拡大すれば、年850億円の節減となります。また、職員の時間創出効果は金額以上に大きな価値を生みます。DXにより生まれた余力で、これまで手が回らなかった地域課題への対応や市民サービス向上施策に人員配置できれば、行政サービス全体の生産性が向上しますgdx-times.com。
さらに、定性的効果として住民の利便性向上も見逃せません。オンライン化で行政手続きの待ち時間や負担が減れば、住民側の時間コスト削減や満足度向上につながります。これらは直接GDPには表れない「消費者余剰」の増大として経済全体にプラスをもたらすと指摘されていますesri.cao.go.jp。つまり、行政の非効率解消は単なるコスト削減に留まらず、住民・職員双方にとって価値ある時間を創出する効果があるのです。
まとめ
地方自治体の行政現場には、紙中心・属人的な旧来業務から派生する様々な非効率が存在し、それが全国的に巨額のコスト負担となっていました。しかし近年、政府主導のDX政策と自治体自身の改革努力により、こうした非効率の是正が加速しています。典型的なムダ(重複入力、紙・ハンコ依存、システム重複投資など)をデジタル技術と標準化で排除することで、年間数千億円規模のコスト削減と住民サービス向上が両立できる可能性がデータから示唆されています。
もっとも、DXは手段であり、真の目的は創出したリソースでより良い行政サービスを提供することですgdx-times.com。削減されたコスト・時間を地域の課題解決や新たな施策に再投資することで、地方自治の質的向上につなげることが重要です。今後もエビデンスに基づく業務改善を進め、効率的で持続可能な自治体運営を実現していくことが求められています。
参考文献・資料: 本レポートで使用したデータは、自治体の監査報告書、総務省・デジタル庁の公式発表、経済研究所の分析、ニュース記事など多岐にわたります。引用箇所に示した出典【】をご参照ください。各出典には具体的な数値と根拠が示されており、自治体DX推進の現状を把握する上で有用です。